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網膜検査でアルツハイマー病診断〜日経サイエンス2022年12月号より - 日経サイエンス

脳と同様の変化が網膜に生じることが判明,早期発見につながりそうだ

眼球の奥にある網膜は,発生途上の胎児の脳から一部が枝分かれしてできる。つまり数層のニューロンが重なってできている網膜は中枢神経系の一部だ。近年,脳に生じるのと同様の変化が網膜に表れる例が数多く報告されたことから,網膜を調べてアルツハイマー病の早期発見につなげようとの考え方が注目を集めている。治療法のないこの神経変性疾患の患者は米国だけで600万人と推定されている。

かつてアルツハイマー病を確定診断するには患者の死後に脳を解剖するしかなかった。だが2000年代初頭には,症状が最初に表れる何年も前に徴候をつかんで治療法を研究できるようになった。現在,陽電子放射断層撮影装置(PET)による脳画像と脳脊髄液(脳と脊髄を取り囲む透明な体液)の検査が,アルツハイマー病を初期段階で診断するのに寄与している。

「初期徴候の検出能力は飛躍的に向上した」とロードアイランド大学の神経心理学者・神経科学者スナイダー(Peter J. Snyder)はいう。だが,これらの方法は容易に利用できるとは限らず,費用がかさみ侵襲性も高い。PET撮像は血液中に放射性の造影剤を注入する必要があり,脊髄液は背中の椎骨の間に針を挿入して採取しなければならない。「非侵襲で簡単に実施できる安価なスクリーニング検査によってリスクが高い人を適切に絞り込み,精密検査を通じて診断につなげる方法が必要だ」とスナイダーはいう。

その意味で網膜はとりわけ魅力的な標的だと彼は付け加える。脳組織に密接に関連しているうえ,眼科で日常的に使われている非侵襲的な方法によって瞳孔を通じて調べることができるからだ。


人間の網膜。ここを調べれば,アルツハイマー病の徴候をつかめる可能性がある。

網膜にもアミロイド
あるスクリーニング検査は,アルツハイマー病患者の脳内に蓄積するベータアミロイドというペプチドの形跡を網膜に探すことを狙っている。患者ではこのタンパク質断片が網膜にも蓄積することが複数の研究で示され,発症前に検出できる可能性を示す証拠も見つかっている。

ミネソタ大学医薬品設計センターのヴィンス(Robert Vince)とモア(Swati More)は2014年,様々な波長の光を分光解析して撮像する「ハイパースペクトル画像法」を用いてマウスの網膜にアミロイド斑(ベータアミロイドの塊)を特定したと報告した。また,それらのマウスがアルツハイマー病を発症した後期に,脳にアミロイド斑が生じていることを確認した。2人はその後,人間の網膜でもアミロイド凝集体がアルツハイマー病の初期マーカーとして機能する可能性を共同研究者とともに見いだした。(続く)

続きは現在発売中の2022年12月号誌面でどうぞ。

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